No.437 信頼関係の作り方は教えてくれない
コラム目次へ 「医学部では患者さんとの信頼関係の作り方は教えてくれない。まずは患者さんの話を聴くところからと思い」病いの経験者の語りを聴く活動を続けている医学生のことが紹介されていました。(朝日新聞2025.1.25「がん新時代」31面)(記者がまとめているので、本人がこの通りに言っているかどうかはわかりません。)
若い人たちの間にこのような動きがあることに、未来への期待を感じます。
でも、この言葉を読んで、どこかの大学が「患者さんとの信頼関係の作り方を教えている」と言うとしたら、それもなんだかなという感じがしました。信頼はhow toで作れるものではありません。
患者さんの話を聴くことは、間違いなく信頼のためのアルファでありオメガです。それ以上の教育はできないと思います。
OSCEで「患者さんの話を遮らない」ことは重要なポイントですが、それだけでは「聴く」ことにたどりつきません。それで良しとしないで、「患者さんの話を遮らない」ことの奥にある「思想」を伝えてくれているでしょうか。(No.152「種明かし」にも書きました。)
でも「話を聴く」ことは、患者さんのことが「わかる」と言うことではありません。
言葉にまとめた時には、もう患者さんの心の動きはロンダリング(洗浄)されています。リアルタイムの心の蠢きは自分の中でも消えているので、言葉に収めようもありません。
言葉に収めるということは、その蠢きを消すことです。言葉にまとめた時には、その人の「物語」として、その人自身が受け入れられるように整理/修正されています。語る前と語った後とでは、もうその人の気持ちは少し異なった者になっています(少しズレています)。
話には、聞き手が居ます。聞き手が要ります。だから話は、無意識のうちに聞き手が聞きたいことに合わせてものになっていきます。
信頼の源は、「話を理解する」ことではなく、患者さんのことがわからなくても(わからないからこそ)そばに居て話を聴き続けることです。そのことを大学で教えてくれていないのでしょうか、伝わっていないのでしょうか。(2025.04)
日下 隼人