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No.312 患者のタイプ?

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 もう20年以上も前のことですが、ある臨床の学会で心理学者が「患者のタイプと対処法」について講演した内容について、その学会誌で読みました。それによると、


(1) 強迫的性格:
完璧主義、几帳面、達成意欲大、柔軟性に欠ける。しつこく説明を求める。
対策: 患者の理解できる言葉で詳しく納得がいくまで説明する。

(2) 被害的性格:
疑い深く、病気に極度に敏感。外部には攻撃的・内面では自信喪失。
対策: 外面に出た行動にとらわれず、ほんとうに言いたいことをよく聴く。

(3) 衝動的性格:
前後の見境ない行動、思考や感情より理由の説明できない行動が先行する。
対策: 単純明快な説明をし、復唱させる。スタッフの介入や権威ある態度が必要。

(4) 幼児的性格:
依存的で子どもっぽい。責任転嫁、要求が通らないとすねる。
対策: 理解があり優しいが、操作的(スタッフを操作する)な行動には厳しいアプローチ。

(5) ヒステリー的性格:
自己中心的で大げさ。ドラマチックな訴え、自己暗示性が強い。
対策: ふりまわされない。批判や非難は無効。自分で責任を果たしたときや、自分で考えたことを褒める。

(6) 憂鬱な性格:
ストレスをため込む。自責や罪悪感が強い。「捨てられ不安」
対策: 全面的なサポート



 さらに人には「思考型」「感情型」「行動型」があり、「分かってもらえた」と患者さんが言う時、思考型の人は「情報交換の可能な知性的なスタッフが自分を分かってくれた」と思い、感情型の人は「自分の気持ち、悩みや怒り、悲しみを受け止めてもらえた」と感じ、行動型の人には「とにかくやってみましょう」が有効と述べられていました。

 私はこの記録を読んだ時に「話を聞いた医者は翌日には忘れているだろう」と思い、私自身ほとんど忘れていました。でも、最近また人を型別にわける講義をある研修会で聞きました。それによると、


A. 達成支配型:
行動的、押しが強い、決断力がある、言い方がストレート
対応: くどくど話さない、単刀直入、質問より情報提供、コントロールしようとしない、裁量権を与える

B. 論理追求型:
客観的、ねばりづよい、慎重派、分析が得意、計画性を好む、言い方が正確
対応: 急に大きな変化を強いない、データで示す、専門性を評価する、根拠とリスクを示す、任せる

C. 審美創造型:
創造的、アイデア豊富、明朗、順応性がある、変化を好む、言い方は表現力豊か
対応: テーマを絞る、アイデアを引き出す、批判より改善案を、ネガティブな表現を使わない

D. 貢献調停型:
協調的、穏やか、気くばり上手、援助が得意、言い方が優しい
対応: プロセスからていねいに、まず気遣いを示す、褒めるより感謝、段階ごとに相談



 こちらの講演は患者対応というよりマネジメントとしての話でしたから、聴衆は結構楽しそうに聞いていました。自分にあてはめたり、自分の周囲の人のこと(なにか「馬が合わなかった」上司や部下)を思い描いたりしていたのかもしれませんが、患者さんへの接し方として聞いていた人もいたようです。

 精神分析家のC.G.ユングも、人のタイプを「外向的」と「内向的」に2つ分けた上で、人の心を「思考(論理)」「感情(好き嫌い、快・不快)」「感覚(見たまま・あるがままに感じる)」「直感(思いつき・ひらめき)」の4つの機能に分け、人は2×4=8パターンのいずれかに分類されると考えましたし、ここでふれた講演もそのような考えを基礎としているのかもしれません。
 でも、きっと人はこのようにどれかの型にきれいに分けられることはないでしょう。人にタイプはあるでしょうし(私も、このような分け方に意味がないとは思っていません)、言われてみると自分がどれかに当てはまるような気はします。同時に、どの型にも自分に当てはまるところがあるようにも感じてしまうものです(「血液型による性格分け」も同じようなものです)。人間は、そんなに「一筋縄」ではいかなそうです。それに、時と所によって、型の間を移動することもあるでしょう。「くどくど話さないで」と言う人への説明を簡略にしたら「どうしてプロセスからていねいに説明しない」と叱られることもあるかもしれません。

 なによりも、このように患者を対象化して観察し、操作的に接することが良いコミュニケーションにつながるとは考えにくい。その「目の高さ」が壁をつくります。こちらのことを鑑定しようとする人、自分のことをうまく「操ろう」とする人と、人は「仲良く」なることはできないのです(その雰囲気は必ず伝わります)。医療者やマネージャーが相手の型を正しく判断できることが、そんなに多いとも思えません。人をタイプに分けて「対策」「対応」を考えようとする「誘惑」は、コミュニケーションを諦めたときに忍び寄ります。
 「丁寧に接し、患者さんの話を丁寧に聴いた上で、データを踏まえて論理的な説明をきちんと行い、同時にポイントを確認する。患者さんの感情に配慮しその思いを受け止める。どうすれば良いかを提案する」ということを「当たり前のこと」としてきちんとしようと説明すればよいだけではないでしょうか。人の心の型について説明することは、そのことをわかってもらうための材料にはなると思います。自分の説明を聞く人がどのような部分に関心を示すか、どのような言葉に反応するかを気にかける(人の心の型に少しだけ気を配る)ことには意味があるのですから。
 でも、患者さんにきちんと向きあっていると感じてもらえれば、その人の型とズレた説明や「対応」であっても付き合いは深まるはずです。
 そのような説明で終らないと、講演を聞いた人たちに「ある、ある」「あいつだ」という思いを残すだけのことにしかならないでしょう。(2018.12)

コミュニケーションのススメ 日下 隼人 コラム

● 本コラムの内容は、著者 日下 隼人の個人的な意見であり、マイインフォームド・コンセントの法人としての考え、および活動に参加しておられる模擬患者さんたちのお考えとは関係ありません。

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